* 風のよりどころ * -16-
ゴンの鼻だけを頼りにしてポンズの位置を探る。
しばらくして洞窟の前にたどり着いた。
「オレ一人で行く」
「その時はスタート地点に戻れ!!」
「じゃあ同盟破棄だ、お前らもう戻れ」
やっぱり優しいな、レオリオは。
レオリオだけが洞窟の中に入ってからさほど時間がたつ前に、叫び声が聞こえた。
「三人とも! 来るな!! ヘビだ!!」
ゴンとクラピカはその声を聴いた瞬間洞窟に向かって走り出した。
それを見て、もすぐ後を追う。 こうなれば一連托生ってね!
洞窟に入ると中でレオリオは倒れていた。 周りにはヘビが数匹いる。
「レオリオ!」
「ハブにかまれてる! 毒は強くないけどこんな数だと危ないよ!!」
ゴンが傷口から毒を吸い出した。
念を使いたいところだが、エアブレスは毒にはほとんど効果が無い。 毒が体内に残ったままただ傷口が塞がってしまうだけだ。
「早く・・・医者に!」
「無駄よ。 入り口に近寄らないほうがいいわ。 ヘビ使いバーボンの罠、ヘビが襲い掛かってくるの」
洞窟内にいた、一人の女の子が言った。 この子がポンズだろう。 レオリオ伝てに聞いた容姿と一致している。
確かに入り口にヘビがこちらを向いて群がっている。
は実物のヘビを初めて見た。
「バーボン! プレートなら全部やる! 我々をここから出してくれ!」
「無理ね。 彼は私が殺したもの。 方法は秘密」
それならとクラピカはバーボンの体を調べようとしたのか彼の体に手を伸ばした。
バーボンの体にクラピカの指が触れる前にポンズが言った。
「彼に近づいてもヘビは襲い掛かってくるわよ。 もちろん、ここから出ようとしてもね」
絶望的じゃないの・・・・。
そのときゴンとクラピカが顔を見合わせて力強くうなづいた。
「あるよ、きっと」
「何が?」
「解毒剤」
なるほど。 敵に何か条件をつきつけるならばこちらにも条件は必要。 そのための解毒剤ってことか。
それがあるなら咬まれても大丈夫だよね。
ゴンは怪我してるし、クラピカのきれいな顔は守りたい(ぇ
少し戸惑いながらもはバーボンの体に手を伸ばした。
「、咬まれるよ? オレが行くか・・・ら・・・・・???」
ゴンの言葉が途切れたのも無理は無い。
なぜならがバーボンの体に触れてもヘビ達はの周りを取り囲むだけだったのだから。
動物に好かれる性質だっけ?私。
不思議に思いながらもバーボンから解毒剤とついでにプレートを盗った。
レオリオ無事になって、は念をレオリオに使った。 傷の痛み止めと自己治癒促進の程度だが。
「でも・・・このままじゃ失格になっちゃうよ」
「ポンズさん! ここに入るときに使った睡眠薬、まだ残ってる? バーボンのプレートと交換してよ」
「何する気なの?」
「息を止めておく。 もちろんポンズさんも外に運ぶからさ。 ね?」
無茶な子だぁ。 でもそこに惹かれるものがある。
「でも、四人だよ? 抱えきれる?」
「オレだって男だよ、それくらい大丈夫!!」
本当に無茶な子だ。
-
が起きると、飛行船の中だった。
第四次試験は私が眠っている間に終了したらしい。
しかし凄いな、ゴン。 本当に四人も運び出してくれたんだ。 小さくたって男の子かぁ。
試験終了を告げられる。 クラピカはすでに私よりもずっと前に起きていて、ようやくレオリオも起きてきた。
「おはよー、傷、大丈夫?」
「ああ、なんか傷の直りがありえないほど速いんだけどな。 まぁ問題はねぇよ」
「ゴンもほっぺ大丈夫? ヒソカ遠慮なく殴ったって言ってたけど。 平気・・・かな、男の子だもんね」
「うん!!」
ゴンの顔にずっとあった影が消えて、もとの明るいゴンに戻っていた。 この具合なら心配はないだろう。
そういえばレオリオは医者志望って言ってた気がする、まぁ多少怪しまれても問題はないが。
それまで後ろに引っ込んでいたクラピカが話しかけてきた。
キツイ、でも迷った感じの口調で。 なんだろう。
「、少し、無粋なことを聞くかもしれないがいいか?」
「うん、何?」
「一次試験で……ヒソカがいたとき、君は後ろでじっとしていたな。 止めようなどとは思わなかったのか?」
「おい、クラピカ! やめとけよ。 別に手出しもしなかったじゃねーか。 それにこの試験ではオレらを助けてくれたしよぉ」
「黙っていてくれ、レオリオ!」
クラピカはレオリオが止めに入ったが、それさえも撥ね退けきつくこっちを睨んでくる。
「普通・・・・・・助けなくちゃいけないものなの?」
「まぁ、今回はオレらを助けてくれただろう?」
「・・・・・・別に、私はゴンに興味があったから。 傷付けたくないなって思っただけだよ」
「それは・・・さ、他の人達には向かないの? この二人とか、他の人とか。 助けたいって思わない?」
ゴンが控えめに聞いてきた。 助けたい・・・一般大衆を?
わからないそのままの気持ちを言葉にする。
「・・・・・・わからない。 でも、そう教えられたしそう思うよ? 何も利益は無いのに自分を危険にさらさないほうがいいって。
そりゃあ・・・大事だって思えるモノは守りたいって思うけど」
「それでいいじゃねぇか。 手の届くものは守るってのが普通だと思うぜ。
ゴンが変なんだよ。 普通まったくの他人なんか助けやしねぇだろうしな」
「だが……!!」
こちらばかり非難してくるクラピカに少しイライラしてきた。 こんなことは今までなかったのにな、どうしたんだろ。
「クラピカだって殺されてたのじっと見てたじゃない? それと同じだよ」
「……くっ」
「私もヒソカよりそうとう弱いんだよ? そんな私に何を求めたいの? 立ち向かって殺されてれば良かった?」
「そうは言っていない!! ・・・っしかし君はヒソカと親しそうだった、たとえ立ちはだかっても殺すまでは行かないんじゃなかったのか」
「冷静に考えてみて。 キミが見てきたヒソカは知り合いだからって邪魔されても殺さない人?」
「・・・・私の中では好きなほうだよ、レオリオとクラピカは」
だからさっきの試験でも戦おうとはしなかった。 貴方からしたらこれも見殺しかもしれない。
ヒソカの気まぐれがなければ殺されていたのだから。
「助けられるなら助けてたかもしれないけど……」
今まで邪魔と感じたら命を取る覚悟もなしに殺してきた。
(殺さなくったって良かったんじゃない?)
違う、違う、違う。
頭の中で誰かの声が響く。 誰かの声に聞こえただけで自分の声かもしれない。
「え――これより会長が面談を行います。 受験番号44番の方、おこし下さい」
突然飛行船の中に放送が流された。
44番……ヒソカかぁ。
あのクックックと意地悪そうに笑うヒソカの笑みを思い出すと何故だか少し落ち着いてきた。
うぬぼれるな。
私は私さえも守れなかったあの頃とは違うけど
関係の無い他人まで守れるほど強くもないんだ。
「やっぱり私は私の大切な人達だけを守れればそれでいいと思うよ」
「……そうか、悪かった、私の意見を押し付けたりして」
「ううん、そんなところまで考えられるクラピカは強いと思う」
本当に、凄い、と笑ってみせればクラピカも少し困ったように笑い返してくれた。
少し後で面接ってことでもネテロ会長に呼ばれた。
「失礼しま…す」
世界にはばかるハンター協会、その会長。
そんなネテロ会長がいる部屋はどんなに立派なものなのかと多少の覚悟をして入ったものの、実に質素で目立つものといえば会長の後ろにある「心」の字くらいだった。
会長にさだされては座布団に座った。
「さてと、まあちょいと質問をするだけじゃ。 別にそう構えなさるな」
ネテロ会長はあごの白いふさふさの毛をもてあそびながら話しかけてくる。
「なぜハンターになりたいのかな?」
「……本当は言っちゃいけないんですが。 依頼内容の一つに私もハンター試験を合格すること、とあったので」
「ほうほう、おぬし自身はなりたくは無い、と?」
「なりたくなくは無いですが、どちらでもって感じです」
「ならば、おぬし以外の9人の中で一番注目しているのは?」
「405番」
「ふむ、では最後の質問じゃ。 9人の中で今、一番戦いたくないのは?」
「……44番と305番」
どうあってもヒソカとイルミには敵いはしないから。
キルアとかハンゾーとかも結構強いけど、それは念の知らない者達にとっての事。
所詮は念をほぼ熟知しているの敵ではない。
というか依頼人相手に攻撃も何もあったもんじゃない。
「ご苦労じゃった、下がってよいぞ」
質問はネテロ会長の言ったとおり本当にちょいとだけだった。
は座布団から立ち上がり外に出ようとドアに手をかけた。 するとさも今思い出したかのように、ネテロ会長が声をかけた。
「そうじゃった、。 おぬしは念をなるだけ使うな、おぬしの大切なものを傷つけたくなければな」
「……言っている意味が分かりません、会長さん」
失礼します、とだけ言って部屋を出た。
私の念は人を守るもの。 治すもの。 何故使っちゃいけないの?
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えーと
ちなみにヒロインちゃんが私は弱い的なこと言ってますが、蜘蛛をベースにしたら彼女がそう思うのも仕方がないって感じです。
かなり強いですよー。 蜘蛛のみなさんにはかなわないとは思いますが。
ああっと、よくわかんない彼女の念ですが、一応説明っぽいことをする場面を設けようと思ってますので。
それまでお待ち頂ければ嬉しいです^^;
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