* 風のよりどころ * -17-
「それでは最終試験を開始する!!」
ネテロ会長と司会者の話では最終試験はトーナメント製、一対一の勝ち抜け勝負。
つまり一番上に上り詰めた人が不合格ということ。
ルールは単純明快で、「相手にまいったと言わせること」そして「相手を殺さないこと」。
この二つを守れば他に何も規定は無い。
の試合は第六試合。 相手はレオリオだった。
と、その前に第一試合、ゴンVSハンゾーだ。
ハンゾーも審判に再確認していたとおり”勝つ条件”において負けず嫌いなゴンを相手にするなら厳しいかもしれない。
それでもハンゾーのほうが圧倒的に強い。
ゴンの勝率なんて数パーセントも無いのに、何故か期待させるのはゴンの持つ、天性の何か。
9人の中では弱い部類に入るであろうゴンが合格のチャンスを多く与えられているのもこれをネテロ会長が感じ取ったからかもしれない。
レオリオから感じ取ったのは優しさ・・・とかかな(いやそれはないだろう君)。
『ハンゾー対ゴン!!』
試験官マスタの開始の合図とともにゴンがすばやく動いた。
だがハンゾーはそれ以上の速さでゴンに追いつく。
「子供にしちゃ上出来だ」
ドゴッとゴンの首筋に手刀が入る。
圧倒的なレベルの差ゆえ、ゴンがその攻撃に気づいてもよけられるはずも無く、そのまま倒れた。
ハンゾーはそのまま気絶しかけたゴンを起こして目を覚まさせる。
「差は歴然だ。 早いとこギブアップしちまいな」
「っいやだ!!」
その言葉を聞き、ハンゾーはまたゴンをはたいた。 その度にゴンはよろめき、咳き込んだ。
それでもゴンは降参せず、ハンゾーは攻撃の手を激しくせざるをえなかった。
予想通り、ハンゾーの一人勝ちがしばらく続く。
かれこれ3時間あまりそれは続いた。
ポックルの呟きのとおり、ゴンはすでに血反吐も出なくなっていた。
静まり返った空気の中、我慢の限界をすでに超えていたらしいレオリオが叫んだ。
「いい加減にしやがれ ぶっ殺すぞてめェ!!」
そのレオリオに対してハンゾーが忠告を施し、それでも止まろうとしないレオリオを試験官が再度止めた。
レオリオはやっぱり優しい。 そして甘い。
ゴンがかろうじて立ち上がる。
「大丈夫だよレオリオ・・・ ま・・だまだやれる」
もうボロボロのくせにそう言ったのが気に食わなかったのか、ハンゾーはゴンを押し倒し、腕をひねった。
「腕を折る」
だから降参すると言え。
そう重く言い、再びあたりに緊張の糸が張った。
「っいやだ!!」
ゴンはの想像通りにそう言い、その代償として腕を折られた。
ボキッと鈍くしかし大きな音と、ゴンが痛みに耐えて息を呑んだ音だけが聞こえた。
言い様のない緊張があたりに走る。
は見かねたようにレオリオのそばに行った。 彼は感情に抗わず動くため、その用心だ。
レオリオの体は全身が恐らく怒りで震えている。
「クラピカ、止めるなよ。 ゴンにゃ悪いが抑え切れねェ」
「止める? 私がか? 大丈夫だ、恐らくそれはない」
「――――駄目だよ」
「「?!」」
別に気配とかを消して近づいたつもりはなかったのだが、彼らは怒りで回りに払う気は予想以上になかったらしい。
クラピカが止めてくれるだろうとも思っていたが、クラピカはそれに乗ってしまった。
はクラピカが冷静に状況を推理できる人ととっていたが彼もまた、ゴンにかかわると感情を操作し辛くなるらしい。
クラピカはの声に驚き、声を荒上げた。
「何故止める? はゴンがどうなってもいいと言うのか!?」
「ゴンは覚悟してその場にいるの。
それはどれ程ものかはわからないけれど、その覚悟を他人が折っていいものじゃないと思うから」
あんなに真っ直ぐな人をはじめて見た
どこまで伸びてゆくんだろう
「だがっ!!」
「大丈夫。 ゴンだってハンター試験を乗り越えてきたんだし、自分の限界は解ってるはず」
多分。
そんな不確定な感じの言葉に二人は完璧には踏みとどまってくれなかったが、多少の戸惑いは感じてもらえたようだった。
ふと試合のほうを見ると痛々しいゴンの姿が目に入った。
「!!」
突然、ネテロに呼ばれた。 その声の大きさにだけではなく、会場にいる全員が振り返った。
ネテロはすぐ後ろに来ていた。
「(おぬしの念が漏れそうになっておるのでな。 一度外に出てくれんじゃろうか)」
耳打ちをして小声で言ってきたので、念とかの単語は他のものには聞き取れなかっただろう。
確かに確認してみると、少し念の発・・・エアブレスが漏れ出ていた、ゴンに向かって。
私の念は他人を補助するもの・・・私はゴンに力を与えようとしていた?
ゴンに死んで・・・いや、負けて欲しくなかったの?
まだゴンにはたどりついていなかった念を体に戻した。
は先ほどのネテロの言葉に頷き、試験会場の外に出た。
二人を止めたというのに、自分が一番制御できていなかったのだ。
蜘蛛のみんな以外で仕事でもないのに助けようなんて思ったことはない。
これからもずっとそうだろうと思っていたのに。
『お前は感情で念が漏れるな』
『じゃあ、・・・・感情のコントロールの修行?』
『・・・・・いや、お前の感情は蜘蛛にしか向いていないだろう? なら問題ない』
クロロの考えが外れるなんて珍しいな、とは懐かしさにクスと笑った。
しばらくすると、試験官の一人がゴン戦が終わったと知らせにきたのでは中に戻った。
第2試合はヒソカの試合だから見た。
終わったヒソカに「傷直して★」とも言われたが、
「まだ合格してないでしょー。 皆合格してからなんだから」と言い返し何もしなかった。
クラピカのキレーな顔にキズつけたお返しだ。 私がキレーな物が好きだということを知っているくせに。
第3試合が過ぎ、第4試合が過ぎて、合格したヒソカの顔を治療し終わった。
(念で治したのだが何故キズが治ったかは”ヒソカだから”でクリア)
第5試合のキルアはポックル相手に棄権した。
ああ、次の相手がイルミだって分かってないのか。
第六試合。
レオリオ対だ。
「レオリオ、降参して」
「やだね。 そっちこそしてくれねーか?」
レオリオは当然ながら掛け合ってくれなかった。
も一応自分の合格も仕事の依頼内容に入っているため、降参など出来ない。
仕方ない、と息をつき、ナイフを構えると、レオリオも同じくナイフを構えた。
胸の前にナイフを立て構え、前に突き出す。
戦うときは邪念を捨てて。 蜘蛛のみんなに習ったことだ。 この勝負、念は入らない。
「ナイフ使いとして、勝負だね。 レオリオ」
「すまねぇが・・・勝たせてもらうぜ!」
そう言うとレオリオはに接近し、上からナイフを振り落とした。
はそれをすっと右に避け、外側から切りかかるが、レオリオはそれをナイフで受け止めた。
そのまま力で振り上げられ、はナイフを引き後ろへと跳んだ。
いくら非念使いだといえど、鍛えてある青年の力には勝てない。
だから私は受け太刀はしない。
しばらく攻撃しあい、は服のみが数箇所切れていて、レオリオは素肌もいくつかきり傷を受けていた。
狼狽さもレオリオのほうが上だ。 はひとつも息が切れていなかった。
「自信過剰のつもりはないけど、私はレオリオより強い。
自分の力を全部使ったら、キルアにだって勝てるよ」
「・・・・!」
後ろのほうで、クラピカが少し驚いた声でキルアにたずねていた。
「・・・本当か? キルア」
「・・・・負けたことは無いさ。 でもは一度だって本気で戦っちゃくれなかったからな」
の仕事内容に戦いを入れることはタブーだったため、が本気を出して戦うことはなかった。
初めの頃はゾルディック家の人たち・・・イルミとかキルアとかカルトとかイルミとかが攻撃を仕掛けてくることはあったが、
イルミは逃げの一手でどうにでもなり、キルアやカルトにいたってはエアブレスを使うまでもなかった。
はレオリオにナイフを突きつけていった。
「これ以上は次の試合に影響してしまう・・・・その前に降参して。 次にかけて。」
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むむむ。
レオリオ相手ーっ 何故ー? いえ、好きですよレオリオ。 大好き。
ていうか戦闘無理です、脳内変換お願いします;;
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