+ 風のよりどころ + -13-





相手は大人の女だった。 結構綺麗なほうに入ると思う。 右の泣き黒子が特徴的だ。


殺すのかなぁ。 

だとしたら少し騒がれるかもね。 まぁすでに容姿で目を引いてるから今更なんだけど。




「あたしぃー、そうね、体の柔らかさ、なんかどーぉ?」

「カタカタカタ………… ……わかった」


「おい、オレット! やわらかさだと!? もっとマシな勝負にしろ!」

「いーじゃないの、別にあたし50年ごとき減ろうと出れないし〜。 恩赦っていうのに興味ないの。 無理やり出されたって感じなのよ?」

「〜〜〜っ! 勝手にしろ」


「カタ……はじめない……?」




その魅惑的な女性、オレットにガンドットは文句をいうが、結局やる気の無い彼女にガンドットのほうが折れたようだ。

その間ギラタクルはひどく暇だったようで、(一応)無口なはずのその口を開いた。

オレットは柔軟体操を始めてしまった。 ギタラクルはそれをボーっと見ている。




「あなたぁ、柔軟しとかないでいいのぉ?」

「カタカタカタカタカタカタ」




彼女の体はやはり自信があるらしく、柔軟の段階でも股は確実に180は開いている。 

ギタラクルってやっぱりゾルディックだから人よりは柔らかくなってるんだろうけど、どうなんだろう。

というかゾルディックだから、とは言ったが、ゾル家が皆で柔軟やってる姿を想像すると……ちょっと嫌である。

オレットの柔軟が終わったようだ。

何故かリングの横に橋が伸びていて、そこにはこれまた何故かレオリオがいた。 ゴンに聞いてみると、司会者やるらしい。

ちなみに彼の手には紙が。 

オレットが用意していたのだろうか、レオリオはそれを片手に喋り始めた。




「さーっ! やってまいりました、どちらの体が柔らかい? コンテストー!!

 ではまず、オーソドックスの、長座体前屈……よん」

「ちょっとォ! 恥ずかしがって読んじゃあ駄目じゃない」


語尾が小さくなったレオリオに対してオレットが腰に手を当てて怒る。

誰でも恥ずかしいと思うが。




レオリオの指示で二人一緒に足元に手を伸ばす。 オレットのほうはべったりと手のひらが床についている。

ギタラクルのほうは……立ったままなのに両腕は股間に入り、入った手は股間から背中に伸びている。 すご、あれ人間?

レオリオがギタラクルの勝利を告げた。




「さてさて次は、これまた定番の股開き! もちろん180度以上くらい伸びるわよね!」


レオリオは開き直った感じで、女言葉を易々と使いこなしてしまっている。

凄いのかもしれないが情けない。

そして股開きはこれまたギタラクルの勝ち。 オレットは210度ほど開いていたのだが、ギタラクルはほぼ320度は開いていた。

勝てるほうがおかしいというものだ。




「次ぃ! ギタラクル選手の勝利! またまたギタラクル選手! ま〜た・・・」


結局人間業ではないようなものを見せびらかし、全勝したギタラクルだった。 

それに傷つくオレットではなかったらしく、ギタラクルに柔軟のコツを楽しげに聞いていたのだから女の人は強い。





「んじゃ、最後はオレだね」


次は消去法的にキルアだ。 レオリオが絶望的な顔をし、キルアが少し怒る。


「敵の姿とか戦い方決まってもないうちからあきらめんなよな! そりゃー暗算対決とかじゃお手上げだけどさ」

「そうか相手次第じゃまだチャンスが……」




キルアって数学嫌いだったんだ。

というかレオリオはさっきのクラピカVSマジタニ戦の時といい、今といい、人の実力がわからないようである。 

まぁこういうのは経験がものをいうし、一般人ならほとんどレオリオと同じ考えをもつだろう。

キルアの相手はザバン市犯罪史上最悪の大量殺人犯だそうで、レオリオがものすごく詳しく説明してくれた。




でも……カタギの世界の話だよね、それ。 

どう考えても蜘蛛のほうがたくさん殺してる……でもまぁ慈善事業もやってるらしいから(見たことは無いけど)蜘蛛のがマシなのかな。

この勝負はもちろんキルアの勝利だった。 

相手の心臓を盗み取り、つぶした。 ただそれだけ。

レオリオとクラピカ、そしてトンパはキルアが暗殺一家のエリート(今は家出中)だったというのを今知ったようで、驚いていた。




四勝三敗で、勝負には勝ったがレオリオの賭けのおかげで50時間を部屋で過ごすことになった。

私はもちろんいつものごとくギタラクルのそばに居た。

途中でキルアが改造した手を見せていたので、ギタラクルにも見せてくれるように頼んでみた。

キルにばれるから、と却下されてしまったが。







時間が経過した後、皆で急いでゴールを目指した。

最後に女神らしき像がある場所にでた。




     【最後の分かれ道】

  ここが 多数決の道 最後の分岐点です。




ちょうど読み終わった頃、突然女神の像が喋りだす、


「7人で行けるが長く困難な道………○  4人しか行けないが 短く簡単な道…………×。

 ちなみに長く困難な道は45時間、簡単な道はおよそ3分で着きます。

 短いほうを選ぶ場合は、壁に設置された手錠に三人がつながれた時点で扉が開きます。 三人は時間切れまで動くことが出来ません」




「先に言っておくぜ。 オレは×を押す」

「オレは○を押すよ イチかバチかでもその可能性にかけたい」

「残り時間は一時間も無いんだぜ。 短い道しかないよ。 もちろんオレは4人のなかに入るつもり」




上から、レオリオ、ゴン、キルアの意見だ。 

急かすように女神がもう一度言った。


「長く困難な道なら○を。 短く簡単な道なら×を押してください」




皆の空気がピリっと張り詰めたとき、ゴンが声を上げた。


「待って! みんな○を押してよ!」

「ゴン? 今更何をいってやがる! ×を押すほかゴールする道はねぇんだ!!」


レオリオが辛そうに見えないことも無い顔で、叫び返した。 

たとえ戦ったとして残るのは、実力的にギタさんに私、キルア、そしてゴンかクラピカだろう。

キルアの方が私より断然身体能力は上だけど……キルア念まだ覚えてないしなぁ。

とにかくここでゴンに従ったほうがいいのはレオリオ、とくに君。 

でもレオリオはギタラクルと私の戦いを正確には見られていないから仕方が無いかもしれない。

ゴンは何をする気だろう。




「いい考えが思いついたんだ」

「ゴン…… その方法でいったとして、のこりは30分と少ししかない。 間に合うか?」

「わからない。 ぎりぎりだと思う」




シーンと沈黙が続く。 皆半信半疑のままのようだ。

私はギタラクルのそばから離れ、ゴンに寄る。


「○ね わかった」

にこりと笑えば安心したようにゴンは安心したように笑い返してきた。


「カタ………… 

ギタラクルから大量の殺気と言葉が飛んでくる。 皆がその殺気に反応して、とっさに何かしらの構えを取った。




これは反論を許さないという契約主の意思。

でも、ヒソカの合格を受け、一番注目を受けたゴンを信じてみたい。

ヒソカの合格が無くても、私はゴンを信じていたと思う。 この子には人を惹きつけてやまない何かがある。

私はギタさんに睨み返した。 ギタラクルの殺気が少し治まる。




「ギタさん…… ○を押して。 信じてよ」













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ゾル家朝の日課。 柔軟体操(*゚ω゚):;*.':;ブッ

いいですねー ゼノさんもシルバもキキョウもマハさんも未登場のおばあちゃんもイルミも(ミルキも?)キルアもアルカもカルトも。

みーんなでくにょーん

ゼノ「キルアはやはり才能はピカイチじゃのう。 誰より柔らかい体をしておる」

ミルキ「そりゃあ、キルアの柔らかさは歴代の中で最高ってくらいじゃない?」

鼠「……イルミだったら柔軟体操の図は思い浮かべられるよ、自分」

イルミ「(くるり)なんだって?」




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