* 風のよりどころ * -12-
「うっわぁぁーーん!」
何で私があれしきの奴に負けなきゃなんないんだーーっ。
悔しー!
どこからどう見ても私の勝ちだったはずなのに……くそうヒソカめ(違
自身の情けなさに私の両目からは涙と、嗚咽がもれそうになる。
とりあえず涙をこらえてイル……ギタさんに飛びついて、泣き顔を隠すためにぎゅっと胸に顔を押し付けた。
涙と泣き声がいっきにあふれ出してしまった。
一度泣き出すと止まらなくなってしまい、少し抑えた声を上げて泣く。
そうしていると、ポンと背中に暖かい感触があった。 ギタラクルがの背中に手を回してくれたのだ。
おまけにそのままポンポンと頭を優しく叩いてきた。
ギタラクルの手が触れる部分から不思議と暖かさが広がり、涙は止まった。
大人の男の人の背中は広くて安心する。
まるで優しかった、昔の父様みたいに。
いくら見放されてあんな事されたって会えなかったら、もうあの背中を感じられなかったら寂しいって思うのが普通だ。
もうあの人はここには居ないけど。 もうずっと会うことは出来ない。 抱きつくことも。
また背中にすがることが出来た。 だから涙が止まったんだきっと。
しばらくはぎゅと抱きしめられたまま居たいなぁと思ったけど、決闘の最中だからそうもいかない。
バクテラは引っ込んで、次のやつが出てきた。
トンパと私ので二敗となってしまった。 あと、二度負けちゃったら駄目である。
どうしよ、負けてしまったら私の所為かも……。
次はクラピカだった。
本当、顔に傷はつけないで欲しいと願ってみる。
それに比べてマジタニという奴。 顔がこれほどにないまで気持ち悪い。
「今までに19人殺したが……切りが悪くてイライラしてたんだ。
オレは命のやり取りじゃなけりゃ興奮できねェ。 デスマッチを提案する」
「チッ、今度は連続殺人鬼かよ」
レオリオが、舌打ちしてつぶやいた。
連続殺人鬼の癖にマメだな、いちいち殺した人の数を胸に書いてるなんて。
でもクラピカなら勝てる、と思う。
「心配いらないよ。 だってあいつ見ててもゾクゾクしないもん」
ゴンのお墨付きももらったことだし。
それでもレオリオはまだ心配していた。 優しい性分なのか、ただ人の力が見分けられないのか。
マジタニが飛び上がり、そのまま全体重をかけてクラピカ付近の床を素手で砕く。
その背中には、クモのイレズミがあった。12本足の。
「イル……ギタさん、蜘蛛にあんな人いたっけ」
「いないと思うよ。 弱いし、ナンバーも入ってないし」
ここで言うクモは空に浮かんでるヤツじゃなくて虫でもなく、史上最強と悪名高い『幻影旅団』のことである。
幻影旅団に近し者は彼らを蜘蛛と呼ぶ。
何で知っているかというと仕事の常連相手だから。
と、まぁそれもあるけれど私の居場所は蜘蛛だから。 団員じゃあないけど。
そのくせに居たっけ? なんて発言したことは皆には内緒でー。
「くくく オレ様は旅団4天王の一人 マジタニ。 負けを認めるならば今のうちだぜ」
四天王とか……クロロ以外に団員に優劣なかったはずである。
まぁ、団長に力があるのも仕事のときだけだったけれど。
マジタニは語ったくせに幻影旅団のこと全然調べてないようだ。
と、グンとクラピカから大量の殺気が出た。 その瞳は真っ赤な緋に染まっていた。
紅い目のクラピカはマジタニをつかんで持ち上げ、奴の制止の声も聞かず、大振りに殴った。
マジタニはそのまま倒れた。 そしてクラピカは三つの忠告を言った。 (聞こえてないと思うけど)
一つはイレズミにはナンバーが刻まれていること。 二つ目は殺した数なんか数えやしないということ。
まぁ数えてたらきりがないしね。
「3つ、二度と旅団の名をかたらぬことだ。 さもないと私がお前を殺す」
クラピカが戻ってきた。
「緋の、眼…………そっかクルタ族なんだね、クラピカ生き残ってたんだぁ……」
「私の一族を知っているのか?」
「うん。 蜘蛛に全滅させられたことも」
クルタを蜘蛛が襲ったときは私はまだ幻影旅団に腰をおろしていなかった。
一応居たには居たが、まだ認められておらず、仕事なんか手伝っていなかったのだ。
とはいえ、今は旅団にある意味一番近しい存在。 あくどい事をやっていることはもちろん知っている。
……クラピカの側にはまわれないね……。
あれ? そういえば蜘蛛って呼び名、近しい者しか知らなかったのに……今私蜘蛛って言ったよね?
「何故、その呼び方まで知っている!?」
「私は………………んむっ」
クラピカの気迫と緋の眼に押され、うっかり口を滑ろうとしたとたん、後ろから手で口をふさがれた。
ギタラクルだ。
「カタカタ………… 次、オレが行く」
「ぷへっ …ギタさん? 戦い方でバレちゃわない?」
ようやく塞いだ手を外せて、意見を言えた。 だが反面ギタラクル押し黙ってしまった。
周りに聞こえただろうが、これだけでは何のことかはわからないだろうからヨシとする。
クラピカの答えをはぐらかしてしまった。 ……言うわけにもいかなかったけれど。
結局次はレオリオが行った。
でも、負けた。 おまけに時間をかけてしまって、残り59時間くらいだったのに一気に9時間まで減らしてしまった。
やっぱ男って変だ。
これで二勝三敗。 もう一度でも負けてしまえばアウトである。
でも、心配なんかない。 なぜなら次はキルアとギタラクルだから……負けるはずが無いと踏んだわけである。
次はギタさんが行くらしい。
「大丈夫なの? 戦い方でキルアにバレたり…しない?」
「カタカタ………… 戦い方、変えればいい、だろ」
それもそうだと思って、それ以上は何も言わなかった。
廊下に足を踏み入れたギタラクルだったが、思い出したかのように振り返った。
「カタ……、ナイフ貸して。 針以外持ってないや」
「はい」
先ほどの戦いでちょっぴり相手の血が付いたベンズナイフを渡した。 一応、クロロにもらった奴だ。
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父様母様と呼ぶってことで、カルトとも仲良くなれたら…いいなぁ(・∀・)
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