* 風のよりどころ * -6-
ギャアア、という恐らく断末魔の叫びと、猛スピードで肉を切る音が聞こえる。
ああ、恐怖におびえる弱者の嘆きと震え上がった心音も聞こえるかな。
その音のままの惨劇が目の前で繰り広げられている。
いつもの、(ハンター試験じゃ私は見たこと無いけど)ヒソカの遊びだ。
相変わらず、変な奴。
傍らでその変な奴の持ってたトランシーバーでイルミとたわいも無くお喋りしているほうが変なのかも知れない。
だって、暇なんだもん。
走る気無いし、弱い者いじめも嫌いだし、イルミはヒソカがいるでしょって迎えに来てくれないし。
「だからーヒソカが、また遊んでて。暇なのー」
「そういっても。 面倒だし、試験官の目くぐってそっちに迎えに行くの」
イルミのけちんぼ。
ああ。 暇ぁ………………
「っってぇーーーーーーー!! 何しやがる てめぇ!」
とひときわ大きな声が出た。
誰だろう?と振り向けばどこかで見たことのある風貌。
ああ、あの一次試験の脱落しかけてたネクタイ野郎!
「試験官ごっこ♥」
あの体力程度じゃ、ヒソカの相手は無理だなぁ。
合格ももらえないと思う。
というわけでそのネクタイさんの横に居た金髪の人がなんか睨んできたけど無視してイルミとの会話を続けた。
強そうなのとか、まず残ってなかったから合格者が出るなんて思ってなかった。
だからちょっと驚いた。
ネクタイさんがヒソカに向かったのも。
黒髪の男の子が飛び出してきてヒソカに竿ぶつけたのも。(リールだよ!
ヒソカがネクタイさん担いでこっちに来たのもすごくびっくり。
気絶させられてたけど、結構度胸あるんだ。
あんな力でこのヒソカに立ち向かう人なんて、初めて見たし。
そのままはヒソカのネクタイ男を担いでいる反対の腕に座って、イルミに道を聞きつつ第二次試験会場へ向かった。
着くとヒソカはネクタイ男を無造作に木の根元に下ろした。
どうするの?という目を向けると
「あの子たちが迎えに来るだろ◆」
という答えが返ってきた。
肩から私も下ろしてもらいネクタイさんの目が覚めるのをまった。
ヒソカはほっぽいて行ってしまった。
しばらくたつとヒソカにさお?をぶつけた男の子と金髪の人がネクタイさんの名前らしきものを呼んで、こちらに向かって来た。
「レオリオ!!」
「キミは……さっきの………」
黒髪の男の子はすぐにネクタイさんにすぐ駆け寄った。
だが、金髪の人はヒソカといた私へひどく警戒しているようだ。
「レオリオ、いつから気付いてたの?」
「あ?ああ ついさっきな。 この嬢ちゃんが冷やしたタオル当ててくれてよ」
ほれ、と真っ赤にはれた頬にのった白いハンカチを男の子達に見せた。
金髪の子はそれを見て少し驚いたような顔をした。
ヒソカの合格、はそこそこ信頼してもいいものだから。
すると無邪気に男の子が笑顔を見せた。
「そうなの? ありがと! オレ、ゴン! 君の名前は?」
「私は、、ゴンね。あなた方は? 金髪さんとネクタイさん」
ネクタイさんのほうはとりあえず名前は知ったが、ちゃんと自己紹介するのが……多分普通。
そう、キルアに聞いた覚えがある。
一通り自己紹介が終えた後、クラピカは警戒を解いてはいなかったが少し緩めたらしかった。
一応ヒソカとの関係も聞かれたので、利害が一致したから一緒にいるの。と答えておいた。
皆はわからなかったらしいが、そのまんまだろう。
のエアブレス【風の恩赦】をもらう代わりにイルミとヒソカには身体的な楽と金銭をもらっているのだから。
そう、私の仕事はこれ。念によるリラックスを届ける。 そして能力の一時的増加も。
その後イルミの……ゾルディック家の跡継ぎのキルアにもあった。
ゴン達とは、知り合いみたいだ。
キルアが来ているなんてイルミから聞いてないぞ??
イルミまたはその他ゼノさん達の仕事の依頼でゾルディック家にはたびたび出入りしていたから、キルアとは結構仲が良かった。
「!? なんでこんなところに? ハンター試験受けに来たのか?」
「キルア? のこと知ってるの?」
「ああ、まぁな。 で、なんでこんなところに?」
ビッとキルアは私を指差した。
人を指差したら失礼なんだぞ〜。
とりあえず四人につめられてしまい、ごまかしてみた。
誤魔化せなかったけれど、そのとき二次試験開始のベルが鳴ったので助かった。
「えへ」
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