* 風のよりどころ * -5-
「ふわー、多いねぇ 人」
「そりゃあねぇ◆ でも、これでも選抜されてるんだと思うよ♥」
私の横にはピエロ並みに変な人、ヒソカがいる。
美形の癖にその顔にはおしゃれと称して不可思議なペイントが常に描かれている。
やめたら? と何度言ってもヘンタイ的な言葉しかかえって気やしない。
私はヒソカの横にいるとますます小さく見える。
とりあえず髪は長いので上のほうで二つにしばり、赤系のワンピースを着ている。
あれだ、ゴスロリとやらの一歩手前の洋服。
ちなみに14歳。
これ以上年いくとこの服は駄目だよね。
エレベーターから降りてきて、地下道に入った。
ヒソカのおかげか人の視線はガンガン集まった。
……まぁ私の服装も入っているかもしれない。ハンター試験にはこんなの着てこないだろうから。
やりにくいだろうって?いいの。
私別に何もしなくていいもの。契約者が二人も居るしね。
まあ……最後くらいは何かしなきゃだろうけど。
しばらくすると、ジリリリリリと大音量の目覚まし時計のような音が鳴り響く。
試験官らしきものが前に歩み寄り、説明した。
「第二次試験会場までご案内いたします」
サトツという試験官は奥へと動く。
受験者もいっせいにそのほうへ動き出した。
達はしばらくじっとしていた。
「イルミ、走ろっ」
走るのは嫌いではないが好きではない。
正直どれだけ走るのかと思うと面倒だった。
だからずっと最後尾で走っていた。そこまで脱落者は出なかったが、脱落しかけた変なネクタイ野郎はいた。
しばらくして階段に差し掛かってから脱落者が増えだした。
イルミは私と平行して走っている。
カタカタと音を鳴らしながら。
「イルミ、疲れた。 運んで?」
「カタカタカタ…………」
無論姫抱っこである。
イルミは軽々と私を持ち上げる。
「カタ…… やっぱり、近くに居るほど力みなぎるね」
「当たり前。 あ、速さは一定にね」
それから出口まで気持ちいいとはいえない、生ぬるい風を顔に受けながら、
はイルミに体を預けていた。
詐欺師の塒に来た。
ヒソカがそばに来ていた。
サトツ試験官が偽者だと言い張る、猿が来て。
猿はもう見るも無残にボロボロだった。
私だったら仮にその猿のほうが試験官だとしてもとりあえず、こっちの無傷を選ぶね。
なにはともあれ、試験官と猿。 顔はほんのり似ていたかもしれない。
「ねぇ、アレ消して」
そばに居て、うずうずとしていたヒソカにいう。
「……了解★」
きっとヒソカも消したかったのだろう、すぐさま彼の武器であるトランプを取り出した。
猿と試験管にトランプが数枚飛ぶ。
私多分、猿だけのことを言った気がするんだけどな。
もちろん、猿には刺さり、試験管は手に数枚のトランプをつかんでいた。
「これでわかった♠ そっちがホンモノ、だね♥」
本当、好戦的な奴……
ヒソカはにんまりと笑った。
「カタカタ…………ヒソカ、交代だろ」
「うん◆ これでようやくエアブレス【風ノ恩赦】にありつけるよ★」
「♠ 走るかい?」
イルミに運んでもらったため、疲れてはいないけど、見ると下は湿っててグチョグチョだ。
ブーツが汚れてしまう……。 別にいいけど。
「汚れちゃうでしょ? 運んで。
あ、姫抱っこはイルミで飽きたから…そうだな。 腕にのっけて」
は直角におられた片腕に座った。 取っ手はヒソカの頭。
とりあえずサラサラしてたけどやっぱ男の人だ、髪の一本一本が固い。
高くていい眺め。姫抱っこと違って回りが見やすい。
視線が多いけれど。
「なんで……皆、見てるの? ヒソカ。 服装が変わっているにしては見すぎだよね……」 (世間知らずですby作者)
「……★ が綺麗だからだよ♥」
「ふぅん? 物好きな奴らだね。まったく」
(まったく、この姫様は何もわかっちゃいない。 またもby作者)
沼を走る(下の奴が)。
周り一面霧で、前方の人がだんだんとかすれていく。
ついには見えなくなった。でも消えたわけじゃないらしく、確かに足音が聞こえる。ビチャビチャと。
「あれ? ヒソカ、遅くない? 逸れちゃうじゃない」
「いいの◆ ごめんねぇ、♣ ちょっと寄り道することにしたんだ♥」
クックックと気味の悪い笑いと、殺気がヒソカから漂う。
「いいけど……。私は関係無いからね?」
「わかってるよ♠」
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