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ツナは額に死ぬ気弾を受けた。
そして目の前には獄寺の放った大量の、火のついたダイナマイトが。
「復活!! 死ぬ気で消火活動!!!」
この死ぬ気モードとか言うとき、考えることは出来るが、大抵体は勝手に動いていく。
ツナは宙に浮かんだダイナマイトの導火線を一つ一つ素手でつかんで消していった。
うわー手のひら熱くない。相変わらず面白い弾だな。
消し終えたら獄寺は第二段で、二倍ボムを放った。
それもツナが消すと今度は、三倍ボムと言って構えた。
そんなに持てるのか?と思ったツナのとおり、獄寺の手の中から一つ、二つとダイナマイトが落ちていく。
「しまっ・・・」
今回死ぬ気モードの目的は消火活動なので、自分に被害の来ないだろうそれも、全て消してからツナの死ぬ気は解けた。
ところで死ぬ気モードになるとパンツ一丁になるのだが、冬もなのだろうか。
だとすれば風邪を引きそうだ。
それにしても死ぬ気モードは疲れる。
ツナが一息ついていると、獄寺が何故か土下座していた。
「御見逸れしました!あなたこそボスにふさわしい!!
10代目!貴方についていきます!!! 何なりと申し付けてください!!」
「はぁ!?」
「負けた奴が下につくのがファミリーの掟だ」
獄寺は微妙に頬を染めて言っていた。
確かにコイツ顔はいい。顔はイイがはっきりいって気持ち悪い。
慎重派ではなく、コイツ、単に見る目がなかったらしい。
ダメツナに敬意を表するなんて。
というかリボーンのいうことが本当ならば、獄寺は過去に誰にも負けたことがないということになるが、そこはどうなのだろう。
その後ただ単に十代目の実力を見てみたかっただけなんですとか、予想以上でしたとかいう獄寺の話を聞き。
リボーンから欲しくもない褒め言葉をいただき。
「ありゃりゃ〜?サボッちゃってるぜこいつら。こりゃお仕置きしなきゃだな。サボっていいのは3年からだぜ」
「(ゲ、さっきの3年生連中)」
「オレに任せてください。消してやら――」
ダメツナは獄寺という怖いが、頼りになるいじめっ子除けが出来て。
ツナは絶対面倒なことに引きずり込まれるが、下僕が出来た。
ああ、獄寺の気迫が物足りない気がしたのは本気じゃなかったからか。
それでもそれを悟られるようじゃまだまだだな。
帰り道のこと。
獄寺はまいて、リボーンとツナで帰路についていた。
獄寺が破壊、破損させた校庭の処理などで、随分と遅くなったので人通りは少なかった。
ツナは今すぐスキップしだしそうな、軽い足取りで歩いていた。
「ツナ、上機嫌だな。ファミリーが出来たのが嬉しいのか?」
「違うよー ほら、コレー」
鼻歌が聞こえてきそうなほど、あからさまに機嫌の良いとわかる声でツナは答える。
そしてズボンのポケットから筒状のものを5つ取り出してリボーンに見せた。
ダイナマイトだ。
「・・・・盗ったのか」
「人聞き悪いなぁ、オレが消したやつを拾ったんだよー。へへー」
「気持ち悪いぞ」
ツナは、普段なら突っかかってくるリボーンの軽口も軽くスルーして何に使おうかなー、早く試したいなーなどと物騒なことを言っている。
リボーンは気付かれないようにため息を吐いた。
「どうでもいーことだがソレ、導火線短すぎるから使えねーぞ」
ツナが固まったのは言うまでもない。
沢田家が遠くに見えてきたころ、ツナとリボーンは立ち止まり、今来た道を振り返った。
後方に以前の獄寺とは違う、あからさまに殺気のこもった消してある気配を感じたからだ。
正確に言うならば随分前から感じていて、面倒だから放置していて。家にいる奈々に迷惑をかけないために今しかたなく振り返ったのだが。
リボーンが銃を構えようとしたのを、ツナが制する。
「オレがやる。リボーンは他にもいるかもしれないから此処にいて」
つけていた男の、かすかな舌打ちが聞こえた。
リボーンが居るうちでは無理だと判断したのか、男は逃げ出した。
それをツナが追うが表面的なツナを知っていたのだろう、付いて来れないと勝手に判断したのか、男は直線距離をそのまま走り続けている。
実際のツナは幼いころより頭脳も運動能力も同年代より何倍も秀でていた。
それを知られ全ての人に拒絶されるのを恐れてひた隠しにしてきたが、人通りがまったく無い今ダメ演技をする必要は無い。
一歩も動いていないリボーンから見える位置で、ツナは男を捕らえた。
そしてもちろんノックアウトした。
ただしいつものツナのように一発ではなく、憂さ晴らしのために何発も入れて。
顔にもいくつかのあざが出来た男を掴んで、ツナは悩んだ。
さて、この男を自分はどうすればいいのか。
このまま逃がすには本性を見せてしまったから、その情報をマフィアに持ち帰られてしまったらひどくツナが困る。
どうせこの男は過去に他の候補者を殺していった奴の殺し屋か、ボンゴレファミリーのさらなる繁栄を防ぎたいどこかのファミリーの殺し屋だろう。
前者も後者も大きなマフィア、ボンゴレのことだ。星の数ほど疑わしいものがいるに違いない。
ツナはファミリーのボスなど到底なる気はないのに。
「オレが後始末の手配をしてやるぞ」
「リボーン・・・そーだな、元はといえばお前らのせいだし。これからも来たら渡すから、頼んだ」
ツナは男をリボーンに渡して家へと入った。
「ただいまー」
「お帰りツっ君。遅かったわね、おやつにドーナツあるわよー」
「またドーナツゥ?」
「文句いわなーい」
母が笑顔で出迎えてくれた。
この笑顔を見たときに一番ほっとする。そして微妙に胸の辺りがツキンと傷む。
闇の世界の住人である父と結婚したくせに、太陽のような優しい明るい光の住人。
母に並盛に来る前のような顔など絶対にさせない。
それだけはいつも意見の合わない父と始めて一致したこと。
太陽のような奈々がいないと、沢田家の男陣は惑星のように正常に働かないだろうというくらいの影響力。
「母さんー?ドーナツないよ!?」
「あら?リボーン君にあげちゃったっけ?」
「え〜おやつ無しー!?」
奈々の前ではダメツナで通していた。
ずっと幼い頃、隠すことを知らなかったツナを奈々は受け入れてくれたが、周りが許さなかった。
奈々に被害が行かないように、ツナは表で仮面をかぶり周囲をだまし始めた。
奈々に心労をかけないように、ツナは奈々の前での仮面を、だんだんと表の仮面とくっつけた。
恐らく彼女は、かなり早咲きだったが現在はごく普通――実際はすごく駄目だが――の子だと、ツナのことを思っているだろう。
それでいい。
ずっと母さんが笑っていてさえくれればそれでオレは十分だ。
それにしても、マフィア達がどこまでツナの情報をわかっているのかがさだかではない。
アルコバレーノだけでも有名だというのに、その中でも特に有名なNo.1ヒットマンのリボーンが来た上に、そのリボーンがこれまた名の通っている悪童スモーキン・ボムを呼びつけた。
もちろん情報操作くらいはしているのだろうが、目立たないはずがない。
家に張り付いていなかったことと、奈々を人質に取らなかったことから考えて、住所は知られていないのか?
だがツナ本人が見つけられて、資料も探せて、かつ住所はわからないということはないだろう。
では奈々に手を出せない何か理由でもあるのか?
もんもんと思考を巡らすも、その答えが出ることも無く、途中でツナは無理矢理結論付けた。
家に近寄れないなら近寄れないで理由などどうだっていい。
これからも家に、奈々に被害が及ばないよう今まで以上に自分が注意すればいいだけの話だろう。
闇の世界に関係させない自信はさすがにないが、守れる自信はある。
「ツっ君ー!変わりにお饅頭があったわよー?」
二階の部屋に戻っていると、下の階から奈々のツナを呼ぶ声が聞こえた。
「もういいよー!母さんが食べれば」
「一緒に食べましょうって言ってるのよ」
やれやれとツナは立ち上がった。
ドアに手をかける前にガチャリとドアが開き、そこにリボーンが立っていた。
「ママンが呼んでるぞ」
「速いなお前。・・・リボーンもさ、母さんが好き?」
「ママンが入れるコーヒーは美味いからな」
「・・・そーだな・・・」
ずっとずっと共に食卓を囲めていられたらいいのに。
リボはちゃんとママンを大事には思っているんです。
てかママン好きね、俺。沢田家好きだ。でもパパン出ないかも。
そーだな、は結構満面の笑みですわよ。原作沿いだと言い切ります。ハイ。
07.03.01
