望みの果ては 2話



ああ、本当にイライラする。

リボーン(アルコバレーノは長かったためこうなった)が来てからというもの、奴の思惑にすっぽりはまってしまっている。
ツナのダメダメ人生計画はこのままだと塵となって消え去りそうな勢いだ。
あの後、剣道部とのバトルや球技大会でバレー選手をやらされたりした。
それでまだ周囲にはダメツナという大前提を置かれているものの、どこか凄い奴という印象を与えてしまった。

リボーンにも怒りを感じるが大本のボンゴレにも、思惑通り動いてしまう自分にも腹が立つ。
だがツナの怒りの矛先は今、こっそりとこちらを伺っている奴に向いていた。

球技大会少し前から鑑定するような視線がずっと向けられている。
はっきり言ってウザイ。
以前もあったリボーンよりもずっと雑でヘタな尾行だ。バレるのを覚悟でしているのかと思うほど。
その気配は家にまで付いてきて、夜、明かりが消えると去っていく。
リボーンだって気づいてるはずなのになにも言わない。
別に家で気を抜いているというわけではないから辛くはないが、誰も観察されて喜ぶ趣味など持ち合わせてはいないのだ。

今日でちょうど一週間。
そろそろ限界だ。
いつもの通り家中の明かりが消え、尾行者の気配も去り、皆が寝静まった頃ツナは一人起き上がり、動き出した。
気配を消して家を出るがリボーンには気づかれてるかもしれない。

ツナは少し離れた繁華街へと繰り出した。
この一週間で溜まり溜まったストレスを発散する相手を見つけるためだ。
適当にうろついていると早速後ろに気配がした。3人だ。

「待ちなよ、ぼくー。お金もってないー?」

男はそう言いながらツナの肩に手をかけようとした。
だがその手が肩に届くことは無く、次の瞬間男は地面に伏していた。
ツナが伸ばされた手をとって、投げたのだ。

「お兄さんたちー。どうしたの?お金とるんじゃなかった?」

「ちっ、何だコイツ!!おい、仲間呼んでこい!」

「お、おうっ」

ツナがにっこりと言うと慌てたように一人が反対方向に駆け出した。
なんだ、まだいるのか。好都合だ、これでいっぺんに憂さ晴らしができる。
多少怯えながらも一人の向かってきたデカイ男をぶちのめして、男たちの仲間とやらを待った。

今日は何か暗いと思っていたら月が出ていない。
そういえば昼間雨が振っていたな。
ぼーっと空を見ていたが、時折倒れた二人がうごめく以外何も変わらない。
なかなか来ないな・・・。

ツナが痺れをきらして男が去っていったほうへ向かうと10人程度の男たちが倒れていた。
そしてその中に一人だけが中央にたたずんでいた。

「何、君もこいつらの仲間なの?」

ソイツはペロリと両手にある血の滴る武器を舐めてこちらを向いた。
辛うじて見えた武器はトンファーだが、そんなのを使う学生ってそんなにいるのだろうか。
ツナが大量にやったんだな、と思い倒れている彼らを見ると、先ほど仲間を呼びに走り去った奴がいた。

「あーっ!!これ・・・これ・・・オレの獲物だったのに・・・・」

ツナはわなわなと震えた。
そしてキッと、トンファーを持った男を睨む。

「あのなー!人が狙ってた獲物取るんじゃねーよ!せっかく掛かったでかい獲物をー!横取りかー!」

「は?」

男は構えていたトンファーを下げ、何言ってんだコイツ、といった感じでツナを見ていた。
たまりに溜まっていたストレスのせいでツナは少し変だった。
ツナは倒れている男たちを怒鳴りながら恨ましげに踏みつける。

「簡単に負けてんじゃねーよ糞野郎!はぁぁ〜また獲物がかかるのを待つしかないじゃん・・・面倒だな」

「何、君殺り会いたいわけ?」

「・・・・・・それもいいかもね、やってくれる?」

「君、武器無し?」

「大丈夫ー無くてもオレが負けるわけないから」

あっはっはーと軽快に笑うツナは傍から見てとても異常だ。確実にストレスでいかれている。
だがツナと初対面の男はそんなこと知るよしもなく、ツナの言葉に気を悪くしたのか、トンファーを振るってきた。

「・・・・咬み殺す」

威勢の良いそれの、軌道をみてギリギリのところで避ける。
トンファーはスピードを緩めることを知らないように、風を切る音を出しながら次々とツナへと向かってくる。
それをまだ顔が笑ったままツナが避けるから、どんどん男は近づいてくるし、振りまわすスピードも上がってきた。

「あははーゲームみたい。・・・うわっ!?」

ヒョイヒョイと避けていると足がなにかにつまづいた。
倒れていた奴らだ。
ツナの体はバランスを失ってよろめくも、トンファーは容赦なく襲ってきた。
避けられないと判断し、腕でかばう。ツナの軽い体は簡単に吹っ飛ばされた。
立ち上がれたが、生身VS金属だったもので腕はズキズキと痛んだ。

「・・・地理条件頭に入れてないってどうなの?それ」

「いってー・・・、ちょっと変なスイッチ入ってたもんで。思ったより強いんだ、なら真面目に・・・」

ツナが全身の気を張った。闘気がツナのまわりにゆらりと蠢く。
多少ギャラリーが集まってきて、周りは今まで以上にガヤガヤとうるさかった。

じっと動かなかった二人が同時に足を差し出す。
そのとき雲に隠れていた月が顔を出し、男を淡く照らした。

ツナの目に入ったのは、まず月の光に反射して光るトンファー、次に真っ黒でくせっ毛な髪、肩に無造作に掛かっている学ラン。そして、学ランの左腕にある、風紀という文字だった。
そんなのをしているものは彼しかいない。
ツナがあわてて顔を見るも、その予想は悲しくも外れてはくれなかった。

「風紀委員ちょ・・・・・・・・・・・っと」

「何?」

「や、ああの、・・・・・っ失礼します!」

ヤバイヤバイヤバイ!
自分が今まで戦っていた相手が、並盛中の風紀委員長様だったとは!
それは確かに危険だがそれよりもマズイのは、ツナが彼を名前でなく役職で呼んでしまったこと。ヒバリならば彼は有名なので、まだ他校生だとも思える。だけれども風紀委員長という役職で呼んでしまったならば、俺が並盛の生徒だとバレてしまっただろう。

ツナが裏の路地に入ると、後ろから腕を引っ張られた。
振り返るとそこは風紀委員長、雲雀恭弥がいた。

「なんで逃げるの」

「ええっと、勝てそうに無いからです!てか離してください!」

「ヤダ」

何この人ーーーっ!
かくなる上は顔を見られないようにしなければっ、とそれは路地裏で真っ暗だから心配は無かった。
ヒバリはなかなか腕を放そうとしない。

「名前教えてよ」

「・・・・やです」

何を言うかと思えばなんですかこの人。
名前なんて教えたら絶対学校で絡んでくる。

「雲雀恭弥」

「・・・は?」

「名乗られたらそっちも名乗るのが礼儀でしょ」

「勝手に名乗られてその常識は通用しないと思いますが・・・綱吉です」

ツナは言い終わるとすぐに素早く回転してヒバリの手を振り切る。
その際彼の学ランを奪い取って、それを時間稼ぎのためにヒバリの顔に投げつけた。
ヒバリが学ランを自身から取ろうとしているうちに綱吉はせまく入り組んだ路地裏に入り込んでいった。
ヒバリはとうに見えないところにいた。

ああ、何故トンファーを使うものが唯二といるわけが無いと思わなかったのか。



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ようやく雲雀さまだせたーっ。うわ、嬉しー!(ウルサイ
えと、ツっ君はやっつけてた奴らの仲間が来るのを待ってたのに、なかなかこないから行ったら雲雀さんが全部やっつけちゃってくれてて。
しかもそれが結構大量だったものだからキレちゃったのです。分からなかった方すみませぬ、文章ヘタで。
07.02.19

photo by So-ra