望みの果ては 1話



今日も立派に”ダメツナ”出来た。
体育の時間にバレーをするも自分のいるチームは当然のごとく負け。
別に表の顔は平均値にしても良かったのだが、異端者は疎外する彼らと同類でいたく無かった。もう遊びに誘われないように極度なまでの、ダメツナを演じる。それはツナなりの意地だった。
彼らに混ざってやるものか、と。

その結果勉強ダメ、運動ダメ、器量悪し、顔悪し、性格卑屈なダメツナが出来た。
いつものように自身を隠しながらしごく平凡に過ごす。そんな日々が続くのだとなんの根拠もなく思っていた。

ツナは忘れていたのだ。
神はそうそう楽に過ごさせてくれないことを。
平和な日々は続く。そう思いたかったが、それは不可能だった。
幼い頃より何故か自分の直感は凄くよく当たる。
それが今日、もの凄く悪いことが・・・そう、この普通な生活が壊れそうなほどに悪いことが起きると体が感じていた。

――なって欲しくは無かったが直感どおりすごく嫌なことが起きた。
奈々が勝手に家庭教師を雇い、その家庭教師が何故か赤ん坊で。その赤ん坊、数日前からツナを観察していた奴だった。
誰がどんな目的で見ているのかわからなかったため、放って置いたのだが、直に接触してくるとは。
ダメツナの仮面をかぶったまま、追いかえす態度をとっていたが腹に一発入れられ、気絶させられた。

目が覚めると自分の部屋だった。
先ほどけられた腹がずきんと痛む。仕方がない、奈々の前であれを避けられるはずが無いから。
見ると部屋の中に先ほどのリボーンと名乗っていた赤ん坊が寝ていた。

「ったく、何だったんだ・・・・。おい起きろ!赤ん坊だからって許さないぞ!」

リボーンにつかみかかると、すぐに目を覚まし、逆につかまれ、投げ飛ばされる。
来る痛みを思うとつい受身を取ってしまいそうになってしまう。毎度思うが投げられるのも気を使うものだ。
リボーンは銃を取り出して、ツナに銃口をむけた。

「オレにスキはないぞ 本職は殺し屋だからな。オレの本当の仕事はお前をマフィアのボスにすることだ」

「おまえ、殺し屋って・・・てかなんで赤ん坊!?」

職業が殺し屋というのは間違いないだろう。
リボーンから二度の攻撃を受けたが、その動作の綺麗さ・無駄の無さはまさに殺し屋と呼ぶにふさわしいものだったから。
銃を所持しているのもそれでうなづける。
身なりからして確実に一桁な年齢のうちから、殺し屋として周囲に認められているのだろう。
少し・・・羨ましいな。

「何がうらやましいんだ?」

「なんで考えてること・・!?ってかお前にカンケーないだろ!!」

あてずっぽか?
リボーンはすぐに言い返した。

「あてずっぽなんかじゃねー。オレは読心術を習得しているからな」

ツナはダメツナとして咄嗟の表情や微細な動作、仕種を演じるのは自信があった。
実際並盛町に引っ越してきてからの8年間、誰一人として勘ぐられたことがない。
だがそれは表面上のことであって、考えていることを全てコントロールするのはムリだ。

「そのおしゃぶり・・・ お前虹の子供、アルコバレーノだろ?・・・・マフィアってどこのだよ」

ただし常に心が読めるわけじゃない。
全てをさらしだしてやる気はさらさら無い。
少しの間の後、リボーンは無表情な声で言った。

「お前こそ、性格ちげーのは何だ」

「見張ってたから多少の違和感は感じてるだろ?
 あーあ、読心術なんてのさえなきゃ隠しとおせる自信あったんだけどな」

「なかなかだったぞ」

「で。マフィアってどこの?ってか何でオレなわけ?ダメツナなオレに注目すべき点があるとは思えないけど」

アルコバレーノを召抱えているのだから大きなマフィアの確率が高い。
ツナはベッドにどすんと座って問いかけた。

「ボンゴレファミリーだ」

「ボ、ンゴレ・・・・・・でかすぎるだろソレ」

ボンゴレって言えばイタリアでかなり大きなマフィアだ。
そんなでっかいマフィアのボスに日本人をって何を考えているのだろうか。

「アルコバレーノ・・・」

「オレの名前はリボーンだ」

「お前ら何歳だっけ?」

「もう少しで一歳」

「そっかー・・・・6人も仲間が居たんだよな。仲良かったのか?」

双方ともベッドに腰掛けて話し始めた。
ツナがそのままの自分を出していたころはまったく友達は出来なかった。
今も、演技をするにしても彼らと同じというのも癪だったため、元来のツナより下の下となったからまたも親しい人はいなかった。
だから普通とは違うのに幼い頃より自分と同じ能力の者達が周りに居るアルコバレーノが、少しうらやましかった。

「全部が全部仲良いわけないぞ」

ツナはそれを聞くと、ハッと自嘲した。
別物と考えられることを何より嫌った自分自身が普通と違う枠で図るとは。
アルコバレーノと呼ばれようともその特化した能力以外はただの子供なのだ。
ツナは不意にベッドから立ち上がった。
いぶかしげにリボーンがたずねてきた。

「どこへ行く」

「お前に関係ないだろ」

ツナはそれだけ言うと、ドアの前に来てドアノブに手をかけ、そして軽くリボーンを振り返った。
部屋の雰囲気が急にピンと張り詰める。
ツナはすうっと目を細めていった。

「言っとくけどオレはマフィアになんかならないし、ダメツナの仮面をはがすつもりないから。
 もちろんお前にはがされる気もないからな アルコバレーノ」

振り向かずに部屋を出た。夕食を取るのも億劫だったため、外で食べてくると家から出た。
翌日学校へなぜかアルコバレーノが付いてきて、死ぬ気弾なるものを打たれ、ダメツナが片思いしている設定の笹川京子にパンツ一丁で告白させられてしまった。

ああ、オレの平和はどこへ行ってしまったのだろうか・・・。





    top     next

-

リボーンと会っちゃったよ編。
言っておきますがムックが出る可能性は低いです。いえ、出ても美味しい思いをする確立が低いです。
まだハマってないからですね。。。ムックに。そのうちハマりますよあの電撃イナズマーに。
07.02.17

photo by So-ra