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Just Like Heaven -恋人はゴースト-.



「ちょっと待てアルフレッド!お前たまには残業しろ!チームワークをなんだと思っている」

同僚であるルートヴィッヒが叫ぶが、自分の分の仕事はきっちり果たしてある。仲間だとかなんとかすぐに口にするけど、単なる同僚の仕事をフリーで手伝うほどヒマな人間のつもりはない。アルフレッドはひらひらと手を振った。

「女性を待たせるわけにはいかないだろ?オレヒーローだし。キミも仕事人間、やめたほうがいいと思うけどな」

残念ながら今日は女性相手ではないが。エレベーターにかけ乗り、彼から逃れられてため息をつくも、ひやりと首筋に寒気が走る。上司のバッシュだ。

「貴様、まさか逃げようとしているのではあるまいな?この書類、どうする気だ?」

メスらしき金属を首筋に当てられたまま、バッシュは紙の束を押し付けてきた。
ああもう、オレの仕事じゃないのに。

「帰りたいというのなら、我輩を倒していくのである」

元軍人の君に勝てるヒーローなんて、早々いないと思うんだぞ!
自分よりも小柄なバッシュではあるが、元軍人だけあって荒っぽいし眼力は強い。アルフレッドは何度この上司に逆らおうとしたかわからないが、そのたびに死にそうな目にあってきた。こっちが怪我をすると、彼は言う。病院であることに感謝するのである。横暴だよね!?

「君だって、他人のヘマをタダで手伝うの嫌だと思わないのかい?」
「・・・煩わしいのである黙れ。突き刺すぞ」
「オーケィ、わかったよ仕事をしよう。だから放してくれないか?」

そう言うと、最低限の常識はあるようで彼は放してくれて、書類の束を渡してきた。
いつか本当に刃物の類で突き刺されそうで少し怖い。
はぁと安堵のため息をついて、アルフレッドは携帯を取り出す。相手は兄だ

「やぁ、アーサーかい?オレだけどね、会食だけど少し遅れそうなんだぞ。仕事が入っちゃったんだ!」
「嘘つけ、お前どうせまた女だろうが。いい加減にしろよ、兄としてこれ以上見ていられない!」
「それはオレのセリフだよ。そろそろ恋人でも作ったら?」
「と、友達ならいるぞばかぁ!」
「すまないけど上司に呼ばれたから切るぞ!」

呼ばれてなんかいないが、兄の話は長いので無理矢理切る。あのアーサーに友人が出来たことは喜ばしいが、もういい年なんだから、新しい恋人見つけてさっさと落ち着いて欲しいものだ。
ひとまず仕事を終わらせよう、そしたら面倒だけどたまには兄にもかまってあげなきゃいけないから、会食に行って、それから町に出れば女くらい拾えるだろう。
バッシュの手によって次々に追加された仕事をアルフレッドが全て終わらせたのは、7時過ぎであった。
残業代は絶対請求してやろう、そう思いつつ、車にかけ乗る。
アーサーなんかに付き合ってあげる友人を、自分が遅れたからという理由で不機嫌にして無くさせてしまうのはさすがに心苦しい。
急ごうと思うあまり、時計ばかりを気にしていたのが悪かった。

気づいたときには、アルフレッドの乗る車の真正面に、でかいダンプカーが、まぶしい光を放ちながら、接近――





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いわゆるプロローグと1話は分けてみました。
08.12.11