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恒例の風紀お祝い。
1年のころ、いわゆる俺たち「不良」「ヤンキー」「ワル」という部類にいた者たちをのした者がいた。
彼の名は雲雀恭弥。
初日から彼はブレザー指定の並盛中に、なぜか学ランで来た。
いつものように、当然俺らの目に留まるわけで。いつものように、”ターゲット”とした。
それがいつも、が変わったのは次の瞬間だ。
彼は俺らを身動きできないほどに打ちのめした。
誰もが負けることなど予想していなかった。そりゃそうだ。
30対1。
30の中には2年、3年も当然入っていた。
それなのにそれを彼はかすり傷一つ追わず、息切れひとつせずに完膚なきまでに倒したのだ。
その時から、俺らは彼の下についた。
俺は同い年だったが、もちろん2年も、3年生もいやいや付き従っていた。
ところがその考えが変わるのはすごく早かった。
全てが彼に自分自身からひれ伏すようになったのだ。
そして半年もたたないうちに、彼は風紀委員長という地位につき、俺らは風紀に入ることとなった。
・・・なに?長い?そんなことはどうでもいい?
長くない!良くない!
だがまあいーだろう、本題に移ってやる。
1年目の彼の誕生日。
いつも羽織っている彼の学ラン。
彼の腕っぷしにほれたという一部生徒が新しい、彼サイズの学ランを購入し、美しい龍の刺繍をほどこした。
そして彼に直接渡すのははばかられるということで、当時の部室のソファーに置かれた。
その上には小さなカードがあった。
「お使いくださいv」とあきらかに男が書いたと思われる、角ばった、だが丸い字にしようとした苦労の見える字で書いてあった。
偵察隊に任命された俺はみた。
カードに書かれた字は彼の瞳に入ることはなく、即効でゴミバコ行き。
学ランは、一度広げられたものの、彼の眉を歪ませただけで終わって、カードと同じ運命をたどった。
「ちょっとそこの、これ捨てて」
部屋の外にいたのに、気づかれていたようだ。
彼に声をかけられ、俺はそれらを焼却場へと運んだ。
2年目。
委員長に魅せられた人物はかなり多くなった。俺もその一人だが。
昨年とは違い、多くのプレゼントが彼のために作られた。
・学ランに刺繍。鳳凰が描かれている。
・戦時中にあったような、だが真っ黒でちょっぴり現代風の帽子。
・手作りチョコクッキー。ピンクの便箋つき。
・スタンダードにケーキ。俺の人生で一番大きなものを見た。カードつき。
・タオル。真っ黒で、KYOYA.Hと白い文字。ところどころほつれがあり、手作りのようだ。分厚い手紙つき。
とまあ、これに準じたものがあといくつかあった。
だがこれも、昨年同様全てが一度目を通しただけで捨てられた。
タオルにいたっては、
「ちょっとそこの(俺に言ってるらしい)、これ燃やして。誰が持ってきたか突き止めろ」
と、彼の手にも触れられなかった。
そしてそれを送った者は委員長の命令により、風紀委員に打ちのめされた。(その者も風紀だ。
昨年よりかなり多いプレゼントの品々を持って、俺は焼却場へと走った。
因みに俺は小さくてシンプルな黒猫の置物を、執務机の端においておいたのだが。
俺が焼却炉へ放り込んだもののなかにそれは無かった。
後で見たら、窓際に置かれていた。
一度だけ、委員長が猫を抱いている姿をお見かけして、猫を買ってみたのだが可愛いものはお好きのようだ。
3年目。
今年もたくさんのものが応接室に届けられていた・・・わけではない。
今年みごと副委員長となれた俺。
皆を統率して、何をやるかを考えた。
とりあえず委員長の好きなもの、嫌いなものを知る限り並べてみる。
―嫌い
・群れ
・面倒なこと
・汚いもの
―好き
・戦闘
・小さくて可愛いもの(本人に自覚なし。
・学校
よって、パーティーなど論外。各自で送るのも却下。
戦闘も、俺たちじゃ歯が立たないため、却下。適度に強くないとあまり嬉しく無さそうだ。
ところで、俺は委員長の好きなものをもうひとつ知っている。
沢田綱吉という、弱そうなのに委員長と親しいやつだ。
普段とそんなに変わらない風に見えるが、沢田といる委員長は表情が豊かだ。感情表現も豊かだ。積極的だ。
ちなみに風紀委員を含め俺以外誰もこのことを知らない。
今年のプレゼント、目玉は沢田綱吉。
そして、部員たちへのカモフラージュに、学校・小さくて可愛いものをかねた小さなこいのぼり(学校の休日という点で)を委員長のペン立てに立ててみた。
委員長の机からはなくなっていて、俺は部員に恨まれつつある。
だが俺は知っている。
あのあとこっそり沢田に委員長の様子を聞いたとき、沢田が少し困ったような顔で、こいのぼりを手にしていたことを。
「お前、そのこいのぼり・・・」
「あ、これですか?き・・・雲雀さんに貰ったんですよ、どーしろってんですかねー」
少し頬をそめて笑っていた。
今年は今までで一番いいプレゼントになったに違いない。
むぷぷ。
わけもわからず時間がかかった上に、へなちょこ。
面白いのを期待してた方すみませぬ・・。
諸事情により、すでに雲雀さまは並盛中学校にはいって3年目とさせていただきます・・=草壁
07.05.09
