にょたりあ生徒会活動
W学園生徒会。
アルフレッド・F・ジョーンズ。王耀。
会計イヴァン・ブランギンスキ。
副会長フランシス・ボヌフォワ。
会長、アーサー・カークランド。
彼らの代は、生徒たちにとってひどく独裁的な生徒会運営であった。
イベント管理も部費も、なにもかもが教師らの干渉はなしに、生徒会によってのみ決定される。
その権力は絶対的で、教師陣すら彼らにはたてつけず、理事長の弱みすら握っているという噂もあり、一般生徒たちはろくに反抗が出来なかった。
もし反抗勢力が育ったとしても、完膚なきまでにたたきのめされたものだ。
W学園に在籍する以上、皆が皆、その圧政下に置いて我慢してきた。
しかし先日、3月になると彼らはそれぞれ大学やら職場へと旅立っていった。
卒業である。
彼らの卒業によって、W学園には元の平和な学園生活と、相応しい権力を持った生徒会活動が戻ってくる、そんな期待が生徒全員に充満していた。
彼らはまともな生徒会を目指して、日々尽力し、少しずつ、常識的な生徒会を運営していた。
バァン!
もはや慣れ親しんだ生徒会室の扉が荒々しく開かれ、役員たちは皆一斉にそちらを向いた。
そんな乱暴なものが役員であっただろうか、否、そしてそれ以前に全役員が今、室内にそろっていた。
ならば、尋ねてきたものはそれ以外のもの。
開け放たれた赤い扉の向こうには、綺麗な女生徒が3名、たたずんでいた。
「……なにかご要望、ですか?」
「ええ」
彼女らの気迫にみんな押されているなか、会計が聞いた。
真ん中に立っている、三人の中では一番背の低い眼鏡をかけた娘がふんぞりかえって答える。
この忙しいのに、と思ったのは役員全員だったろう。
前の生徒会を立て直すのにまださまざまな苦労は残っている。
だが、本来生徒会とは生徒の意見を聞き、学校を良くする機関である。
前生徒会の圧政に苦しめられてきたのは、生徒全員おなじなのだ。どんな要望でも聞いてあげたい気分だ。
「生徒会を、あたしたちに寄こしなさい」
とは思っていたものの、眼鏡の少女から放たれた言葉は誰一人として予想していないものだった。
数名の驚きが重なる。
「はぁ!?」
「新生徒会長のイギリスが命じるわ、そこをどきなさい元会長。そこは私の席よ!」
腕を組んで、さも自分が正しいかのように自信満々に、だがつっけんどんに言う少女。
高い位置で揺れる金のツインテールは見事にきらめいて、役員たちから見える彼女の姿をさらに現実味の薄いものにした。
会長が戸惑ってしまったみんなに代わって対応する。
「何の話をしているんだ?」
自分たちは学園側からなにも聞かされていない。
そもそも、学園側はまともな生徒会活動にむしろ賛成を示してくれていたはずだ。
こんな急な人事変更など、しかも、会長から変えるなど、ありえるはずがなかった、4月下旬。
「聞こえなかった、とか言わないわよねぇ、ブサ男さん」
「往生際がわるいぞ!」
右側の優雅な雰囲気をかもし出している女と、左側の活発そうな女が言う。
「あたしたち、新生徒会が学園を指揮する。悪いけど、反抗は認めないわ」
ようやく前生徒会メンバーが卒業したと思ったら、また変なのが入ってきたようだった。だけれど、彼女らにそんな力があるようには見えない。
会長が彼女らに正しい生徒会とはいかなるべきかを諭そうとしたときだった。
「なにを……」
「か、かかか会長!こいつ、カークランド前会長の妹ですよ!」
副会長が叫んだ。中央の眼鏡の女を指差して。
「あ、ちなみにアタシの兄貴はアルフレッドだよ!」
「私はボヌフォワね」
なんでもないことのように両脇の二人が言う。
「前生徒会メンバーの三人!?の、妹ォ?!」
つまり会長、副会長、アルフレッドらは全員、3歳違いの妹がいたということか。
一瞬で、あの悪役めいた表情が思い浮かぶ。
身震いするが、しょせん彼らは卒業した身、そこまでの影響力は保っていないはずだ。
「教えておいてあげる。お姉さんたち、ちゃあんと学園側には了承とったから、あなた方の抵抗は無駄よ」
いままでは優雅そのものだった彼女が、クス、と笑ってとった表情。
ペロリと持ち出した契約書らしき書類。
悪夢が、あの悪夢の日々が生徒全員の脳裏によみがえった瞬間だった。